「・・・ツー、・・・スリー・・フォー・・・」

 

「んぐ・・・うぅ・・・はっ・・・ぁ・・」
痛い、痛くて・・・息も出来ない・・・苦しい・・・
でも・・・

大きく深呼吸し、息を整える。

「はぁ・・・ふぅ・・・」

ぐっ

レフェリーがカウント9を数えた所で立ち上がりファイティングポーズをとった。
「やれるか?」というレフェリーの問いに無言でうなずく。

(う〜効いたなぁ・・・これ以上ボディ貰ったらさすがに立ってられないかな・・・)

「ボックス!」

「効いてるぞ!ここで決めろ!」

試合が再開され、セコンドの声に促されるかのように聡里が美月との距離を一気につめラッシュをかける。
ボディを警戒してガードが下がった所に聡里の左右のワンツー、さらにショートフック、かろうじてガードする。
美月が後ろに下がった所に聡里が追撃をかけようとするが、クリンチでそれを防ぐ。
だがクリンチ中も美月の脇腹を叩き攻め続ける。

「ぐっうう〜・・・」

レフェリーが一度2人を離すが、再開の合図とともに再び聡里が距離をつめ追撃を加える。

(今はとにかくパンチを貰わないように集中集中・・・)

聡里の猛攻にガードを固め必死に耐える美月。

ガッ

聡里のボディフック。美月はとっさに肘でブロックするが、
ガードが下がった所に渾身の右フックのダブル。

(狙い通り!貰った!)

「ッ!」

聡里の思惑通り、絶好のタイミングと思われた一撃だったが、寸での所で美月を捕らえる事はなく空を切る。

(かわされた?!)

そこでゴングが鳴り、第3ラウンド終了となった。

 

「はぁ、ふぅ・・・」

コーナーに戻り、セコンドのかなえの処置を受けながら大きく深呼吸する美月。

「美月ちゃん、話さなくていいので聞いて下さい、次のラウンドは・・・」

「美月!、次で最終ラウンドだ、わかるな?」

アドバイスをしようとしたところで文月が割って入る。

「はぁ・・・はぁ・・」
美月が息を整えながら無言で頷く。

「なら、やることはわかるな?」

こくん、と再び頷く。

「よし、なら今は回復に専念しろ」

「・・・はいっ」

最後ははっきりと返事をし、まもなくセコンドアウトのアナウンスが流れ、スツールから腰を上げた。

「・・・今の指示でよかったのですか?」

「ああ、今は余計なこと言わないほうが相手に集中できていい」

「そ、そうですか・・・」

でも実際、私が支持するよりもこれで良かったのかもしれないな、とかなえは思った。
私よりもずっと美月ちゃんの事をわかっているだろうから・・・

「いいか、判定になったらどうなるかわからん、倒しにいけ!ボディ打てば必ず倒れる!
大丈夫だ!いつも通りやれば必ず勝てる!」

(そうだ、次で最後ラウンド・・・)

「はい!」

「さとりせんせー!がんばってー!」

(みんなが応援してくれている・・・、迷ってる場合じゃない!)
先のラウンドでダウンを奪って後、絶好のチャンスでありながら一度もクリーンヒットを与える事ができなかった事に不安が生じていた聡里だが。
セコンドの檄と、インターバル中も止まらない子供達の声援に、迷いを振り切るかのように勢い良くスツールから立ち上がる。

カーン!

ゴングが打ち鳴らされ、最終ラウンドが始まった。

ガシィッ!!
開始早々拳が顔面を打ち抜く音が響き渡る

お互いの拳が顔面を捉えたたらを踏む両者。

(守っていたらやられる・・・なら、やられるまえにやる!)

 

つづく

 

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